アシックス、である。僕にとってアシックスといえば中学の指定体操靴で、体育系部員にとってはメジャーなブランドでも黄色にTIGERと描かれた箱は僕にとってある種、ダサさの頂点でした。文化系でＰＯＰＥＹＥ少年の僕には、当時スニーカーといえば断然ナイキかアディダスだったのがその理由なんですが、よもや自分が十数年後にアシックスの靴を買うとは思いませんでした。

　参加料無料、距離も5Kmという手軽さから、体育の日に市の体協主催の健康マラソン大会に参加したんです。普段は他のランナーの格好ってあまり見られないもんだからレース前によーく見させてもらいましたら、速そうな人はみんな見覚えのあるラインの入ったシューズを履いてるんです。そうアシックス。うわ、履いてる人見たの十何年ぶりだ〜、って思いましたね。
　シューズはメッシュ地でいかにも軽そう。軽快な色使いがそれだけで速そう（実際皆さん速かったです）。よく見るとIGSとか何とかロゴが入ってるのもハイテクっぽくてかっこいいな、と思いました。次は僕もアシックス、そう決めた３４歳の秋でした、ってオーバーですね。

　購入する際は、軽くてクッション性が良いものという点を重視して選びました。専門店に行くまでは知らなかったのですが、ランニングシューズってキロ何分レベルの人はコレという商品ラインナップが形成されてるんですね。
　キロ５分ペース商品群の中でいろいろ試して、ずば抜けてクッション性の良さを感じたのがゲルフェザーでした。ほかのは結構固いんですよ、まさにマラソン用という感じで自分の走力ではまだ早いかな。実力に釣り合わないシューズは故障の原因とも言うし。このゲルフェザーは、着地した時にかかとを包み込むようにサポートしてくれる感じです。色も自分的に速さを感じる黄色のラインだし、訳わかんないけどIGSってかいてあるし、で買っちゃいました。

　実際に走行してみてまずおどろいたのは、クッション性よりも足をホールドする性能ですね。かかとの部分を靴がすぽっと包む感じで狭くなっているので、とてもフィットするんですよ。今までのシューズだと脚を上げたときに靴の中で足全体が遊ぶ感じがあったんですがそれがまったくない。うーん快適。つま先部分のソールは、路面の状況をダイレクトに伝えてくれます。いつも走ってる走路でも、けっこうでこぼこしてたり段差があるんだなぁと感じられて新鮮でした。これって、つま先で蹴るグリップ力にも影響大だよな。トータルな印象としては、高性能な地下足袋はいて走ってるみたいな感じです。やっぱり軽いなあ。

　かかと部分のクッション性は、実際に走ってみるとそんなに感じないんですね。柔らかすぎて走りづらいってことはなく、ほどよく固い反発力です。しかしですよ、坂道になるとまたぜんぜん違うんだこれが。いままでのシューズでは下りで足がばたばたして足の裏に衝撃があったんですが、それが無いんです。LSDのおしまいの下り坂なんか膝とかかとに体重が乗っかって結構つらかったんですが、全然へーき。上り坂でも、クッションがじわりと感じられるんです。おお、ゲルが効いてるな、そんな感じになります。

　やはりアシックス、だてに何年もマラソンシューズ作っていないよなと思いましたね。よく出来てます。地味だのダサイだの思って悪かった。いやもう、十分カッコいいって、マラソンランナー的には。ということでシューズに関しては、もう全面的に降伏して軍門に下るのでした。