200X年、地球温暖化が予想以上のハイピッチで進行し、東京の年間平均気温は25℃を越えるようになった。政府はこれ以上の地球温暖化を阻止すべく、連日40℃を越える夏季の省エネを推進するため新たな省エネルックとして6月1日から9月30日までの期間、マラソンのランシャツ・ランパンスタイルを「クール・ビズ」という名目でビジネスマンに推奨し、与党民事党によりすべての国会議員にもランシャツ・ランパンの着用を義務づける法律案が強行採決された。

「財団法人・省エネルギーセンターによると、全国のオフィスで冷房温度を26℃から28℃に上げることで原油換算で年間31万kL（ドラム缶155万本相当）のエネルギーが節約できるとのことです。」そう小池宇理子環境相がTV討論番組で訴えている。もちろん範を示すため、胸に「本気」と入った赤いアシックスのランニングスーツだ。
「多くの人が取り組めば、ランシャツ・ランパンでは失礼という意識は消える」と話す。裾をランパンに入れるかどうかは「TPOに合わせて楽しんでください」と締めくくった。

ネクタイをしないことで体感温度は相当涼しくなるという意見もあるが、ランシャツ・ランパンの場合、外回りの営業職にはかえって肌の露出部分が多くなり、汗をかきやすくなるのではという意見もあった。そこで、水で濡らしたバンダナをネクタイ代わりに締めることで脳に行く血液を冷却する効果があることを順地堂大学の研究によって実証されたということでバンダナファッションを厚生労働省が推奨。坂ノ口厚生大臣自ら、薄い髪の乱れも気にせず頭に赤頭巾ちゃん風に巻いた沖縄風のテキスタイルを使用したバンダナを首に下げて見せるパフォーマンスを披露。すると、かゆりしバンダナブームがまたたく間に拡がり、1980年の第2次オイルショック時の省エネルックとはまるで違う非常な盛り上がりをみせた。
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最新のランシャツを採り上げている老舗ファッション雑誌「ランナーズ」やアバンギャルドな情報誌「クリール」が飛ぶように売れ、渋谷のアートスポーツに専用のバンダナを求める消費者の行列が出来ると、バンダナやランシャツの買い占めがおき、販売制限とともに野菜やトイレットぺーパの便乗値上げが横行し、都市部を中心に急激なハイパーインフレが発生。地価もバブル期のレベルまで急激に高騰し、つられる形で公共料金が上昇。さらに交通機関の運賃が値上げになると、反発した多くのサラリーマンが連日長距離通勤ランを集団走で行なうようになり、禁煙が広まり、生活習慣病が減少し、医療費も大幅に縮小することとなった。

21世紀初頭、日本はこのようなかたちでデフレスパイラルから脱却しつつ、省エネルギー化に成功。ランシャツ・ランパンおよびバンダナを元にして健康で活力ある日本経済が復活する・・・わけないですよね。